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消すことのできない言葉

NHKの衛星放送が20周年を迎えた企画として、過去に制作された番組が時々放送されている。

先日、偶然チャンネルを合わせ、釘付けになった番組がある。

12年ほど前に行われた、「詩のボクシング」。

「何それ?」と思ってしばらく見ていると、リングの上に谷川俊太郎とねじめ正一が登場。10R勝負(1R3分)で、それぞれの詩を読み上げ、勝敗を競うというもの。

9ラウンドまでは、それぞれがこれまでに作った作品から、相手の状況を探りながら作品を選び、単に朗読するだけでなく、いかにして聴き手を引き込むかを考えながら披露していく。

ねじめ氏パフォーマンスをいろいろ魅せていく一方、谷川氏は、ときおりテンポを変えてはいたが、とつとつと読み上げていきながら、聴き手を自分のペースに引き込んでいるのが非常に印象的だった。洗練された言葉でつづられた詩は、朗読の語り口を変えていく、という化粧をしなくても、伝わる何かを持っているのか。それとも、この語り方が最も聴き手の心に響くことをきちんと計算しているのか。おそらく両方当てはまるのだろう。

最終ラウンドは、即興詩での対決となった。

その場でくじ引きしたお題に基づき、3分で詩を作り、読みあげること。

「テレビ」を引いたねじめ氏は、苦し紛れに作り話を編もうとして途中で時間切れ。

一方、「ラジオ」を引いた谷川氏の即興詩が、見事なものだった。

完全には覚えていないが、次のようなことが織り込まれていた。


書いた文字は消すことができる

消しゴムで Deleteキーで

しかし 私がこうして話した言葉は 消すことができない


重く、そして深く胸に刻まれた一言である。