METライブビューイング「リゴレット」(ヴェルディ)

2012-13シーズン9作目として上演されたのは、ヴェルディの「リゴレット」。

演目紹介は、こちらを参照いただきたい。

この作品、あらすじは知らなくても、何らかの断片に接している人は多いことと思う。

中でも有名と思われるのは、第3幕でマントヴァ公爵が歌うアリア「女心の歌」。テノールなら、是非とも歌いたいと憧れる1曲だろう。

私にとってはもう一つ。大学生となり、自分が合唱を始めて最初に聴きに行った演奏会(第39回東京六連)で早稲田が歌ったのがヴェルディのオペラ合唱曲集。その中に、この「リゴレット」から2曲が取り上げられていたのだ。どの場面で歌われていたものだったのかが、今回改めて分かった。

もともとの物語の設定は16世紀。しかし今回の演出では、何と1960年代のラスベガスという設定で描かれた。
公爵邸はカジノに変身。華やかな世界の裏で様々な思惑がうごめいている、という点では、「あぁなるほど、こんな描き方もあるか」と思いながら鑑賞した。

主役級となるのは、題名にもなっている、リゴレット(マントヴァ公爵に使える道化人)(バリトン)、その娘ジルダ(ソプラノ)、マントヴァ公爵(テノール)。それぞれ見事に歌い、演じていたと思うが、一番印象に残ったのは、この3人ではなく、リゴレットが、マントヴァ公爵への復讐のため暗殺を依頼したスパラフチーレを演じたステファン・コツァン(バス)。殺し屋に相応しい身のこなし、そして無駄のない細身の体から出される豊かな低音。彼の存在が際立っていたように思った。

一方で、ちょっと残念だな、と感じた点が3つある。

ひとつは、リゴレットの衣装。1960年代に道化役、というのが難しいとは思うが、スクリーンで観る限りは「ちょっと着合わせのセンスが悪いオジサン」の体に留まってしまったかな、という印象。

ふたつ目は、インタビューや幕前の解説で、今回の演出が斬新なこと、それに対してどう取り組んだかなどの話題が中心になったのは良いが、私のようにこの作品を初めて観る者にとっては「じゃ、普通はどうなの?」という点が分からない。そのあたりの比較紹介があっても良かったのかな、と思う。
(もっとも、今はネット上に多くの画像があるだろうから、それを見れば良いだけの話なのだろう。)

最後は、やはりインタビュー。歌手、演出家、美術担当の他に、今シーズンがMETデビューの指揮者ミケーレ・マリオッティを紹介してほしかった。もしかしたら、本人が断ったのかな?

いろいろ感じるところはあったが、こうして映画館で、安価に、着飾る必要もなくオペラを楽しむことができるのは非常にありがたい。MET、松竹、そのたスポンサーとなっている方々に感謝である。
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by h-katopon | 2013-03-17 16:45 | 音楽