なぜ私たちを向いて歌ってくれないの?

7年前、当時所属していたコール・セコインデのリサイタル後の打ち上げで、メンバーの奥様から言われた一言である。言葉は更に厳しさを増し、
「せっかく客席にいても舞台上の貴方たちが楽譜から目が離せず、客席向かないなんて失礼じゃない?」
この一言を浴びせられたときの胸の痛みは、今でも忘れない。もちろん、暗譜が絶対だなどと言うつもりはない。だが、楽譜から目が離せないと、声も飛ばず、音楽が舞台上だけで完結してしまい、客席には何も伝わってこない。やっぱり、舞台に立ったときは、楽譜に対して歌うのでも、指揮者に対して歌うわけでもない、客席にいるお客様に向かって歌うのだ。

だから、練習不足のいい加減な状態では決して舞台に立ってはならない、冒頭の厳しい一言を浴びせられたとき、私はそう誓った。残念ながら、実現できていうかどうかは別の話である。

「とにかく何でもいいから舞台に立てさえすればいい」と思うようになったとき、その時こそが、私が歌の世界から身を退く時であろう。趣味でやっていることとはいえ、舞台に立てば立派な演者である。そのことを忘れないようにしたい。
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by h-katopon | 2005-05-14 00:01 | 音楽